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​研究テーマ

温度に応答した種子の休眠と発芽の制御機構

 種子は乾燥などの過酷な環境を耐える能力を持つだけでなく、栄養成長や生殖成長が適切な時期に行われるよう、発芽の季節を選び、成長を再開する能力を持っています。母植物から散布された種子は、多くの場合「休眠」しており、発芽にふさわしい季節を待つことができます。また、種子は光や温度、水分などの環境情報を鋭敏に感知する能力を持ち、それによって季節を「知る」ことができます。

 発芽の季節決定には、特に温度が重要な情報となりますが、種子がどのようにして温度を感知し、どのような仕組みで休眠や発芽をコントロールしているかは、まだよく分かっていません。


 作物生産では、種子が一斉に発芽し、揃って成長することが重要です。このため、強すぎる休眠性や、高温などの環境条件による発芽阻害は、生産効率を大きく低下させます。一方、弱すぎる休眠性や降雨などの多湿な条件は、収穫前の種子の発芽を誘導し、品質を劣化させ、収穫量を低下させてしまいます。温度や水分は、母体上で発達する種子が獲得する休眠の強さにも影響します。このため、特に近年の気候変動・温暖化現象は、作物種子の休眠や発芽に影響し、安定な食料生産にインパクトを与え始めています。

 私たちの研究室では、休眠性を制御するメカニズム、種子が温度を感知して発芽の制御に至るメカニズム、そして発芽の季節を決めるメカニズムを分子レベルで理解することを目的とした研究を展開しています。休眠や発芽には、アブシシン酸とジベレリンなどの植物ホルモンが重要な役割を持ちますが、温度はこのような植物ホルモンの作用をコントロールすることが分かってきました。では、種子はどのようにして温度を感知するのでしょう?温度が植物ホルモンの作用を制御するには、どのような仕組みが働くのでしょう?植物ホルモンはどのようにして休眠や発芽を制御するのでしょう?
 

 私達は、世界中に分布する野生植物で、モデル植物でもあるシロイヌナズナ(写真左)と、主要穀物のコムギ(写真右)を材料に研究を進めてきました。研究室で得られた成果が、高温による発芽阻害がもたらす作物生産効率の低下や、降雨による種子の収量・品質低下の抑止に貢献することを期待しています。

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