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 収穫前の種子が母体上で発芽してしまう「穂発芽」は、種子の収量と品質、そして種子製品の品質を著しく劣化させます。このため、コムギなどの穀類栽培、作物の採種の現場では、穂発芽による被害が大きな問題となっています。たとえば、パンやうどんの原材料であるコムギの種子は初夏に成熟しますが、収穫期の多湿な条件は穂発芽を誘導し、種子内で合成された加水分解酵素の働きにより、小麦粉の品質が大きく劣化してしまいます。種子の休眠性は穂発芽耐性に寄与する大きな要因ですが、アブシシン酸は種子に休眠性をもたらす植物ホルモンです。私達はコムギ種子の休眠性を制御することを目的として、アブシシン酸合成の律速酵素、NCEDをコードする遺伝子の発現を、穂発芽が問題となる種子成熟過程で高発現させる組換え遺伝子を作成し、コムギに導入しました。具体的には、種子成熟過程で発現するコムギのEm遺伝子のプロモーターに、ソルガムのアブシシン酸合成の律速酵素であるNCEDをコードする遺伝子を繋ぎ、コムギに導入しました。形質転換植物では、種子胚のアブシシン酸内生量とともに、種子の休眠性が穏やかに上昇しました。強すぎる休眠性は発芽のタイミングと初期成長をばらつかせるため、生産効率を低下させてしまいますが、穏やかな休眠性の上昇は収穫前の穂発芽を抑制しつつ、播種時の斉一な発芽と初期成長を担保すると期待しています。

 本研究は、農研機構・作物研究部門の安倍史高博士、オレゴン州立大学園芸学部の野々垣裕之博士、野々垣万律子博士、理化学研究所環境資源科学研究センターの瀬尾光範博士(現:琉球大学)らとの共同研究として実施され、2023年3月25日発行のPlant Biotechnology誌に掲載されました。



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大学院博士後期課程の鄭李鵬さんは、生命科学科の吉竹悠宇志助教、吉本光希教授、理化学研究所の瀬尾光範チームリーダー、農研機構の杉本和彦博士との共同研究により、イネの穂発芽抑制に働く遺伝子(Sdr4: Seed dormancy 4)の機能をモデル植物のシロイヌナズナで解析してきました。鄭さんは、この遺伝子(SFL: Sdr Four Like)が休眠の獲得、および休眠性の低下の両方を促し、休眠から発芽へのタイミングの決定に関わることを明らかにしました。この成果は、2022年8月29日にイギリスの科学誌「The Plant Journal」のオンライン版に掲載されました。


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2020年春に修士課程を修了した大森涼葉さんが、広島大学の田中若奈先生、東京大学大学院の平野博之先生のご指導の下に行ったイネの胚珠形成のしくみに関する論文がDevelopment誌に発表されました。


この研究では、イネの花の幹細胞維持に必要な遺伝子、TAB1を発見し、幹細胞の維持が、胚珠の形成に必須であることを見出しました。胚珠は、受精後に種子に発達します。この研究から、シロイヌナズナとイネでは胚珠の作られ方が異なっており、イネでは幹細胞から胚珠が形成されることが分かりました。



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