藤茂雄(とう しげお)博士は生命科学科が発足した2000年に植物分子生理学研究室(旧:農学科の植物工学研究室)に入室しました。その後、大学院生命科学専攻に第1期生として進学し、博士の学位を取得しています。 受賞の業績は、「種子発芽におけるストリゴラクトン受容体に関する研究」です。植物に寄生する植物は、ときに作物に壊滅的な打撃を与えます。主にアフリカで猛威を振るっている寄生雑草ストライガの種子は、宿主となる作物の根から分泌されるストリゴラクトンを感知して発芽します。これが寄生の第一歩で、発芽しなければ寄生できません。受賞対象となった研究で、藤博士はストライガの発芽誘導をもたらすストリゴラクトン受容体、HTLを発見し、その働きを明らかにしています。この発見は、微小で大量の種子をばらまき、防除が困難なため「魔女の雑草」と呼ばれる寄生雑草に立ち向かう研究・技術開発に重要な手がかりを与えています。 ストリゴラクトンには、植物の枝分かれを抑制する植物ホルモンとしての働きも知られています。藤博士が見出したHTLは、枝分かれに関わるストリゴラクトン受容体(D14)と似た構造を持ちますが、ストリゴラクトンが結合する部位の構造が異なっていました。HTLは10ピコモルといったごく低濃度(耳かき1杯のストリゴラクトンを50mプールに溶かした濃度)のストリゴラクトンで発芽を誘導することができます。通常の植物もHTL遺伝子を持ちますが、その感度はストライガのHTLに遠く及びません(数千分の一)。また、通常の植物でもHTLが発芽に関わることが示されていますが、通常の植物の種子発芽とストリゴラクトンの関係はまだ良くわかっていません。今後の研究が期待されます。
<文部科学省の報道発表はこちら>
平成31年度科学技術分野の文部科学大臣表彰受賞者等の決定について
<明治大学HPのニュース記事はこちら> 藤茂雄助教が平成31年度科学技術分野の若手科学者賞を受賞しました
<詳しい研究の内容はこちら>
ライフサイエンス 新着論文レビュー「根寄生植物ストライガのもつストリゴラクトン受容体は高い感受性をもつ」
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